top of page
検索

作文の評価について:ICEモデルとLTD学習

  • anc05825
  • 2015年4月2日
  • 読了時間: 3分

1000円の小さな本

を読みました。

しばしば教師から学習者に「注入」される基礎的な知識、暗記すべきことがらを「アイディア(I-idea)」と呼び、その大切さは尊重しつつ、それだけでは「浅い学び」にしかならないと著者たちはいいます。

それはあくまでも外側からの情報だから試験が終わればすぐに忘れてしまいます。

なぜなら、結局は自分にとってその情報がなぜ大切なのかがわからないままだから。

「浅い学び」だけの教室は、あまりおもしろくない。

こうした基礎的知識を習得しただけの「浅い学び」を、「深い学び」に変えるためには、その基礎的知識(Idea)をほかのことにも関連付けられるかどうか「つながり(C-connections)」、そして、それをより高いレベルやほかの課題に応用できるかどうか「応用(E-extensions)」が、教師にも学習者にも意識されなければならないというのです。

学習者は新しい知識(Idea)を得て、その概念と今まで学んだ他の概念やすでに知っている知識と関連付けられ(Connections)、さらに「それにはどんな意味があるのか」「自分が世界を見る見方に、どんな影響があるのか」というような質問に答えようとする(Extensions)とき、「ああ、そうか!!」と気づく。 この「ああ、そうか!!」の瞬間を経験することによって、学んでいることに自分なりの意味を見出すのだといいます。

「ああ、そうか!!」と気づく瞬間の尊さというのは、とても説得力があると思いました。

ここで思い出したのは、昨年度から授業に取り入れたLTD(Learning Through Discussion)学習法です。 LTD学習は、個人での個別学習とグループでの協働学習を両方とも取り入れたもので、教材は主として読解教材を使います。 まずは個人で次のことがらを自分のことばでまとめ、次にはグループで同様の点について対話をしながら学んでいきます。

①語彙の理解

②筆者の主張の理解

③取り上げられている話題の理解

④知識の統合(すでに持っている知識や情報、あるいは自分の体験との関連付け)

⑤自己への適応(自分の生活や信念や生き方や世界観への関連付け、)

⑥課題の評価(読んだ教材に対する批判的かつ建設的評価) ICEモデルでいうところのI(Ideaアイディア)は上の①②③に、C(Connectionsつながり)は④に、E(応用Extensions)は⑤⑥に、それぞれ対応すると思います。 いずれにせよ、注入された知識・情報と今まで持っている情報とのつながりを認識し、さらにその知識・情報と自分自身とのかかわりまで意識できなければ、学習者自身が「ああ、そうだったのか!!」と気づくような深い学びは起こらないということです。 それで、これが作文やレポートの評価に使えるのではないでしょうか。 ICEモデルの著者たちも指摘していますが、わたしたち教師はさまざまな方法で学習者の到達度を評価しますが、そこにはどこか「第六感」というのか、直感的なものも多分に含まれます。 特に作文やエッセイ、レポートなどは、学生の到達レベルがどこまで進んでいるのか見分けるための具体的な目印や特徴を正確に定義することはむずかしいです(『ICEモデル』p15)。 『ICEモデル』では、すべての教科で応用可能だとして、さまざまなルーブリック(評価基準表)が示されています。 けれども、とりあえず簡単な目安として、 レベル1:基礎的な内容を理解しているか、語彙や表記などは正確か レベル2:既存の知識や情報との関連付けがあるか レベル3:自分自身の生活や世界観などとのかかわりが記されているか というような感じで、学生たちにもあらかじめ説明したうえで(←コレ大切)、評価できるのではないでしょうか。

 
 
 

最新記事

すべて表示
『人新世の「資本論」』読了

授業がやっと終わり、積読を少しずつ崩す。 33歳の研究者の本で、頼もしいなあと思う。 ごく身近な人も巻き込まれた7月の熱海の「人災」(土石流)、学生たちの祖国の大規模な山火事、東京でも新潟でも札幌でも、このひどすぎる暑さ・・・...

 
 
 
パリで先生が殺されたこと 2020.10.18

犯人は、イスラム教徒の18歳男子だった。 「アラーアクバル」と叫んで、犯人も警官に射殺された。 殺された教員は、数週間前の授業で表現の自由を取り上げた。 イスラム教徒の生徒に手をあげるように言い、教室から出ていってもいいと指示した。...

 
 
 

Comments


Featured Posts
Recent Posts
Search By Tags
Follow Us
  • Facebook Classic
  • Twitter Classic
  • Google Classic
  • Wix Facebook page
  • Wix Twitter page
  • Wix Google+ page
bottom of page