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『人新世の「資本論」』読了

  • anc05825
  • 2021年8月8日
  • 読了時間: 3分

授業がやっと終わり、積読を少しずつ崩す。

33歳の研究者の本で、頼もしいなあと思う。


ごく身近な人も巻き込まれた7月の熱海の「人災」(土石流)、学生たちの祖国の大規模な山火事、東京でも新潟でも札幌でも、このひどすぎる暑さ・・・


地球の気候変動は、たとえばエコバックを使ったりマイ箸をもったり、エコカーにしたり、そんな温暖化対策ではもうぜんぜん手遅れで、国連のSDGsなんかでも、辛い現実を直視することを避ける「大衆のアヘン」にしかならないそうだ。


人間の活動の痕跡が地球の表面を覆いつくした年代「人新世(Anthropocene)」の気候変動から、人類の文明を守るためには、「資本主義」そのものに、わたしたちは挑まなくてはならないんだという。


「人新世」にわたしたちが選べる4つの選択肢がわかりやすい。

横軸が平等さ、縦軸が権力の強さとして交差させ、.4分割の図(p113、p281)を示している。


①権力強く不平等の「気候ファシズム」  アメリカのトランプ大統領やブラジルのボルソナロ大統領など。


②権力弱く不平等の「野蛮状態」  富裕層1%と残りの99%の戦いで、もう誰もコントロールできない「万人の万人に対する闘争」状態。


③権力強く平等の「気候毛沢東主義」  コロナ禍の中国や西欧のロックダウンにもみられるが、二酸化炭素排出などについて国家が徹底的に監視し処罰する。


④権力弱く平等の「脱成長コミュニズム」   著者は、ボトムアップ型の社会運動とトップダウン型の政党政治が融合したこのかたちこそ、わたしたちが選ぶべき選択肢だという。



わたしが特に「そうかあ」と自分にひきつけて納得したのは、政治主義批判とワーカーズ・コープについての2点だった。 1) まず、議会制民主主義の枠内での投票によって「良いリーダー」を選出し、その後は政治の専門家に制度や法律の変更を任せておけばいいという「政治主義」への批判 選挙に行って「いい候補者」に投票すること、投票行動の変化こそ「社会変革の鍵」になるというのでは、結局は「未来の政策案はプロに任せておけ」ということになってしまう。


「選挙に行こう」だけでは、ダメなのだ。


2) ワーカーズ・コープ (労働者協同組合)は、労働者が共同出資し、生産手段を共同所有・共同管理する組織。


わたしたち労働者が連帯し、労働の現場に民主主義を持ち込むことで競争を抑制し、職業訓練も事業運営の意思決定も自分たちで行う。 力点は「自分らしく働くこと」で、労働を通じて、地域社会の長期的な繁栄に重きを置く投資を計画するという、経済の民主化である。


たとえば、「感情労働」である介護などのエッセンシャルワークを、自律的で魅力的な仕事に変えることを目指す。賃金と雇用を改善し、人種や階級やジェンダーなどの分断を乗り越えて、コミュニティの再生につなげていこうとする。


これは魅力的だと思った。 社会運動としてのワーカーズコープを実現している場の具体例があげてあり、勇気がわく。


そして、そうしたワーカーズコープが「労働者の能力の全面的な発展」をめざし、生涯にわたる平等な職業教・・職業訓練に力を入れていることにも感銘をうける。


これは、牛窪さん、村上さん、中村さんと共に昨年秋の日本語教育学会大会で主張した、「同僚性」を構築しようとする日本語教師の「小さい集まり」にも、きっとつながるんじゃないか、つながればいいと、そう思った。

 
 
 

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